1日限定両想い
『ありがとう。』
すっと腕の中から抜け出した須崎が、キッチンに向かって少し俯く。
その横顔の翳りに、不意に胸が騒いだ。
「須崎?」
『ごめんなさい。まだうまく切り替えられてなくて…。』
当たり前のことに気付けていなかった自分にはっとする。
須崎は今日、つい数時間前に新田と別れてきたばかりなのだ。
須崎が適当な気持ちで新田と付き合ってきたわけではないことくらい分かっている。
好きだから、一緒にいたのだ。
「悪かった。何も気付けへんくて。」
『いえ…私は全然。』
言葉が途切れて、沈黙が漂う。
効き始めたエアコンがやけに涼しく感じて、温度を調節する為にキッチンを出た。
『やっぱり間違ってたのかな…。』
「え?」
そのとき、小さな呟きが聞こえた。
正面から向き合った須崎の表情はとても苦しそうで。
須崎の中でまだ消化しきれていない、強く根付いた想いがあることを感じさせた。