1日限定両想い

『菊池先生…渉さんがいなくなってから、もう会えないんだって気持ちだけがどんどん大きくなって、毎日どうしていいか分からなくて。』



何もかも1人で決めて、その後のことは考えないようにひたすら逃げていたあの頃。

もう二度と会うことはないと思い込んでいたからこそできたひとりよがりな行動。

あれ程ひとりにしたくないと思っておきながら、俺は須崎を置いてきた。



『全部分かってて手を差し伸べてくれた青波さんに甘えてしまったんです。』

「それは甘えとかじゃなくて、俺のせいで。」

『やっぱり間違ってました。』


後悔に塗れた表情が、ぎゅっと握りしめた手の震えが、須崎の苦しさを言葉以上に物語っていた。



『あのとき私がもっと強い気持ちを持っていたら、2人を傷つけることもなかった。』

「須崎、」

『苦しいまま一緒にいてくれた青波さんも、苦しいまま1人でいた渉さんも、そんな想いさせなくて済んだのに…。』


抱きしめることは簡単だった。

だけどどうしても、その一歩が動かない。



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