1日限定両想い
「暗いな。」
『いませんでした。』
「そうみたいだな。」
大きな弁当にぎっしり詰められたおかずと、特大サイズのおにぎりがほとんど残っている。
「食わねぇのか?母ちゃん泣くぞ。」
『食べますよ。考え事してただけで。』
「どうしたんだよ。」
先程の表情を見ていたから、本当は須崎のことだと分かっている。
だけど話そうとしてやめたあの逡巡が、踏み込むことを躊躇わせた。
『俺まだ高校生なんで。』
「そうだな。」
『俺まだ高校生なんすよ。』
「知ってるよ。」
思わず笑うと桜木もようやく小さく笑った。
いつも大人数の中心で笑っている無邪気な姿からはまだまだ頼りない笑顔だったけれど。
『須崎さんもまだ高校生ですよ。』
「そうだな。」
『俺にできることなんて、何もないっすね。』
きっとどこまでいっても答えの見つからない悩みに、桜木の孤独を感じ取る。
でも俺には絶対になれない関係性が、持てない距離が、2人にはある。