秘密の片想い

 事務所に戻る途中、心配になったのか、様子を見に来たような三嶋と合流した。

「お客様、大丈夫だったか」

「ええ」

「その割に浮かない顔だな」

 私は下ばかり見て、三嶋の磨かれた革靴を見つめて言った。

「そうじゃないわ。借り」

 本当は忙しいくせに。

 代理店営業は何店舗もの、代理店を受け持ち、日に何軒も回って様子を見たり、必要とあれば指導しなければならない。

 なにか、用事があってタケウチ保険事務所に戻ってきたのだとして、私をこんなところで待っていられるほど暇じゃないはず。

 私の心配をよそに、三嶋は豪快に笑った。

「ハハッ。良かった。案外律儀なところは変わってなかったんだな」

 あの頃と変わらない笑顔。

 ううん。あの頃よりもずっと眩しい。
 今の私には眩し過ぎて、真っ直ぐ見られないよ。

「じゃ、いい加減、飲みに行こうよ」

 めげずに誘ってくる三嶋に、私は頭を左右に振る。

「ランチで、お願い」

「そっか。わかったよ」
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