秘密の片想い

 その時、タイミングよく電話が鳴った。
 きっと天罰が下りたんだと思う。

 現実を見なさいと、神様の思し召なのだと思った。

 私は涙を拭き、鞄からスマホを取り出して相手を確認してから電話に出る。

 その一連の動作を三嶋はなにも言わずに、ただ傍で見ていた。

「莉乃(りの)ちゃんのお母様ですか?」

「はい」

 三嶋からの視線が痛い。

「お仕事中すみません。莉乃ちゃん、お昼に食欲がなくて。お熱を計ってみたら38.5度あります」

「わかりました。すぐに向かいます」

 三嶋は、なにも言わない。

 私は電話を切ると同時に、所長に電話をかける。

「武内所長、上野です。すみません。保育園から連絡があって、娘が熱を出したようなので」

「そう。それは大変だ。すぐに行ってあげなさい」

「ご迷惑をおかけしてすみません」

「いいから。いいから」

 ありがたい言葉をかけられ、電話の向こう側にいる武内所長に頭を下げる。

 電話を切り呼吸を置いてから、小さく言った。

「ごめん。三嶋」

 自分の声に、胸が押しつぶされるような気がした。
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