秘密の片想い

「俺はシーと」

「待って。待ってよ。自分がなにを言ってるのかわかってるの？　だって莉乃は男の人が苦手で」

　再び彼と体を重ねた自分の愚かさを、今は後悔していた。

　あの頃の二人ではない。
　答え合わせをしたって、なにをしたって、あの頃には戻れない。

　例え、お互いに求め合ったとしても、それだけで一緒にいられるような間柄ではなくなってしまった。　

「知ってるよ。何度も手厳しい洗礼を受けてる」

　未だ泣き止まない莉乃。
　このままでは、近所迷惑になってしまう。

　困っていると、それが彼に伝わったのか、彼は短く言った。

「また、話に来る」

　そう言って、彼は去っていった。

　彼の背中を見送りながら、やるせない気持ちがこみ上げた。

　もっと早く、せめて３年くらい前に、気持ちを伝えていたら。
　違う形で彼の傍にいられたかもしれない。

　ううん。言えるわけないよ。
　今だって、肝心なことは言えないままなのに。

　自分の弱さを痛感して、未だグズグズ言う莉乃を抱き直す。

「大丈夫。私には莉乃がいる」

　自分に言い聞かせるように呟いて、莉乃に頬を寄せた。