愛は惜しみなく与う④
「お前は、あの杏様の付き人だろ?何ゆえ鈴様の付き人になったのだ!」


こうやって、志木も言われてるんやろな。むかつくやろな。ごめんやな

でも耐えてくれ


「蘭様と杏様に頼まれたので。鈴様の身の回りの世話をさせていただいてます」


母上の側近やからって調子乗りすぎやねんな、こいつ。田畑はあたしには聞こえないくらいの大きさで舌打ちをして場を離れた

ちなみにあたしは地獄耳やし聞こえたけどな



「あたしがトップになったら、速攻あいつ、クビにしてやるわ」


職権乱用


志木にそう言われたが構わない。やりたくないこと引き受けるねん。職権くらい乱用させてくれ


さぁ



あたしは今から鈴や



表情一つ一つ気にかけていかなあかん

指先一つまで

呼吸でさえ


杏を捨てなきゃ




「鈴様、お綺麗です」



綺麗なドレスに身を包んで、あたしは鈴になる。鏡に映る自分の姿は、そこに鈴がいるよう


乗り切れるかな、ここを

いや、乗り切らなあかん




「志木、いくで」


経営計画報告会の当日、あたしはホールの扉の前に立ち呼吸整える



大丈夫
私がいますから

力強い志木の言葉をきいて、会場に足を踏み入れた




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