愛は惜しみなく与う④
泉はチラリとあたしたちを見て、水瀬に近づいた


泉の手のひらは、まだ血が流れている



しかし泉は、水瀬に小声で何かを話していて、こちらには何も聞こえない

ただ空気が…泉の空気が、何話してるん?と聞いてはいけないようなものだった



すごく長く感じた


そして



「あんたが諦めれば、みーんな丸く収まるところに、収まるんだよ」



水瀬が少し大きな声を出した

その言葉は、あたしに向けられていると分かった


だから

もう諦めてるよ

あたしがこれ以上、傷つくことなんて…悲しむことなんて、志木や、烈火のみんなに何かあることだけやから


でも


その時にふと


ハザマさんの言葉がよぎった


あれよりも、辛い出来事が起きると



目の前で鈴が…
あかん。

今は思い出したらあかん


あの時の事を思い出すと、体が震えて動けなくなるから


何もあたしは、乗り越えれてなんていないから


「一旦、志木さん。あなたと話したい」


泉は志木にそう言うと、志木と部屋を出る。あたしも、2人にはさせれないと、外に出されたけど。
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