イルカ、恋うた
また、落ち込んでいると、時間が来て、気分は上がらないまま、寮を出た。


出勤すると、自分のデスクがなかった。


いや、あるんだけど、資料や持て余された証拠品が集められて、埋もれてる。


岩居さんが、愉快げに説明する。


「この証拠品の中身は、昨夜発見された変死体から数メートル先で発見されたの。

無関係とは判断されたけど、断言はできないから、持て余してんのね。これもそう。分けておいて。

この書類は、このファイルに綴じるの。他のもきちんと処理して」


結局、デスクから離れることなく、半日が過ぎた。


動いたといえば、上司等へのお茶酌み。


背もたれごと反って 腰を伸ばした。


すると、背後に立つ岩居さんと目があった。


下から見る彼の顔は、いいもんではなかった。


うわ、と体勢を戻して、向きなおした。


そう いった態度に怒られるかと思ったが、彼は深刻そうな顔をしてた。


「ちょっと、話が……」


と、小声で言う。


どうやら、課長を気にしている様子。


彼に従い、外に出た。


課長どころか、身内全体を気にしているのか。


署の近くの噴水広場に連れて行かれた。


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