イルカ、恋うた
「……何を話した?」


先に手を合わせて、後ろで彼女を待っていた、男性が訊いた。


「お礼、言いたかったの。竜介をあの水族館連れて来てくれて、会わせてくれて、ありがとうございます、って」


美月は笑顔で答えた。


そして、名残惜しみながら、二人は手を繋ぎ、竜介の父親の墓から離れる。


最後に、竜介は敬礼をした。




広島から、数時間かけて、西へ移動した。


「竜介、早く!!」


彼女は小走りで、通路を駆ける。


「そんな急がなくても……」


呑気に頭をかきながら、悠長に歩く、竜介の背後にまわり、彼女は押した。


「駄目!見られなくなる!!」


なんだかんだで、イベントの行われる水槽に着くと、美月は怒った。


「ほらぁ、人でいっぱいじゃん!前に行けなかったぁ!」


一方、竜介は冷静に、そんな彼女の肩を抱き、わずかな隙間に移動する。


「ほら、ここなら見えるだろ?」


「うん、なんとか……」


すると、前の家族連れが気を遣って、屈んでくれた。


お礼を言いながら、いよいよそのイベントが始まる、水槽を見た。


インストラクターがダイビング姿で現れ、イルカの説明をする。


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