イルカ、恋うた
二頭がまるで、輪舞のようにくるくる回り、相手に合わせて、上下に泳いでる。


「可愛い。恋人同士かしら?きっと、そうね」


俺はこの二頭の、優しい瞳と動きに夢中で、隣にやってきた女の子に、気付かなかった。


「ねぇ、ねぇってば。どう思うの?」


「え?どうでもいいよ。性別だって、素人じゃ分かんないじゃん」


「あら、大切じゃない。夢ないのね。ねぇ、一人?」


妙に大人びた子だと思った。


「ううん、父さんと。でも、どこかに置いて来ちゃった。

クラゲとかカニとか、つまみになりそうなもんばかりに、夢中になっているんだ。

僕は、でかい生物が好きなんだ」


ただ、ひたすらイルカだけを見てた。


顔を見ないせいか、女の子は苛立った様子だった。


「ふーん。男の子って、そうなんだ。私、美月よ、ミヅキ。あなたは?」


「竜介だよ、リュウスケ。君も一人?」


「パパとママは。今はラッコの前で二人きりにしておいたの。きっと、最後だから…」


「最後?」


急に暗くなった彼女の声に、ようやくそちらを向いた。


栗色のストレートな髪をポニーテール。
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