俺のこと好きでしょ?-六花の恋-【完】

「……やけにはっきり言うな」

「経験者だから」

玲は淡々と話す。

……経験者ってなに? 僕の脳内の質問に返すように、玲は語り始めた。

「それこそ、信じるか信じないかはお前次第、って話だけど。……いわゆる前世の記憶がある。前世の恋人を探してる、って、俺結構言ってたろ?」

「……うん」

それは幼いころから。

玲はその人に逢うために生きているとすら言っていた。

「前の『俺』はただの町人で、彼女は名家のお嬢様だった。身分違いの恋ってやつだ。世の中にあふれる物語に記されるように、『俺』と彼女は一緒になることは出来なかった。彼女は同じく名門の家に嫁がされて……若くして亡くなった。『俺』がもう一度彼女に逢えたのは、荼毘(だび)に付される直前……。『俺』は二度、彼女をうしなった」

「………」

一度は別れさせられ、二度目は今生の別れ……か。

玲の話を、僕は疑う気はない。

妄言と切って捨てることも出来るような確証のない話だけど、その話をする玲はいつも、ここではないどこかをその瞳に映しているように見えるんだ。

それが前世というやつなのか、それとも恋人なのかはわからないけど。

「だから、お前らみたいに明らかに両想いで一緒にいることが出来る奴らが恋仲にならないのは、個人的には見ててイラつく。俺に喧嘩売ってんじゃねえのこいつら、って思う」

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