みだらなキミと、密室で。
「話はそれだけ。遥琉くんがもし海風ちゃんに振られたらその時は一緒に酒飲みながら泣こうや」
「俺、未成年ですけど」
「言葉の綾ってもんじゃ〜ん」
「意味わかんないっすけど」
「てかほんと口に出さないね。海風ちゃんのこと好きだとか渡さないとか、顔にはバッチリ書いてるのに」
『顔にはバッチリ書いてある』
そう言われて思わず目を背ける。
そんな顔に出るのか、俺。
「やっとちょっと動揺した〜〜可愛いところあんじゃ〜ん遥琉くん」
「キモいっす」
「目上の人にキモいうなよ!」
「目上って……」
男には、特にこの人には弱みを握られたくないって気を張っていたけれど、
なんだかそれすらバカバカしく感じさせるような人だ。
「気緩めんなよ、まじで泣かしたら奪うから」
「……っ、はい」
もう、怯えるのはやめろ。
そう松本にも、早乙女さんにも、背中を押してもらった気がして。
俺はあの頃からなにも変わっていない。
ひとりが怖くていつだって海風の背中に隠れて。
彼女に「大丈夫」って言ってもらわないと不安でたまらなかった。
そばにいてくれた彼女がいなくなってから、俺にはこんなふうに言ってくれる人がいなかった。
受け身ばかりで、自己中で。
ポンコツな俺だけど。
誰よりもずっとキミを想っているから───。