みだらなキミと、密室で。



「ごめん、遥琉!遅くなった!」

伊月さんと別れてお店を出てから、すぐに遥琉に電話をかけた。

『ううん。早乙女さんとなんかあった?』

「えっ?!」

まるであの様子を見ていたのかって思うぐらい、遥琉がピンポイントに当ててくるから、声がうわずった。

『はぁ……。なにもされてないだろうな?』

「なんもされてないよ!昨日のお礼して少し話してただけ」

『そう……』

遥琉の声が遠くなる。

「遥琉?」

『……あぁ、ごめん』

「どうかした?」

『いや。やっぱり嫌だなって。海風と早乙女さんが俺のいないところで一緒にいるとかさ』

あんまりドストレートに言ってくるからちょっとびっくりして戸惑ってしまう。

今までの遥琉なら絶対こんなこと言わないのに。

「不安にさせてごめん。けど、ちゃんと気をつけるから」

きっともう伊月さんだって私に変にちょっかい出すことはなくなるだろうし。

『……うん。気をつけて』

「うん、」

いつも一人で歩いていた帰り道、今まではなんとも思わなかったのに。

今は、電話じゃなくてそばに遥琉がいてくれたらな、なんて思ってしまって。

ふたりを覚えると、ひとりが途端に寂しくなる。

『……海風』

ものすごく優しく名前を呼ばれて。

「ん?」

『……会いたい』

スマホの向こうから聞こえる彼の声に、ドクンと大きく心臓が鳴る。

遥琉も、おんなじ気持ちでいてくれてるんだ。

「フフッ、私もっ」

泣きそうなくらい嬉しくて、口元を緩めてそう言った。
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