俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
何度も自分に言い聞かせ、もつれそうになる足を必死に動かして外に出た。


梅雨の時期には珍しい青空が広がっている。

すでに日が昇っている時間なのかと焦る私とは対照的に、爽やかなベルボーイがタクシーを呼んでくれた。


素足がなんだか心もとないが、仕方ない。

運転手に行き先を告げ、エントランスを振り返って初めて、自宅にほど近い場所にある高級シティホテルだと気づく。


ちょっと待って、なんでこんな高級ホテルに泊まってるの? 

お金足りてないんじゃ……。


このホテルは二年前に完成し、立地のよさと広さもさることながら、エステやスパなどの施設も充実している。

女性からの人気が高く、なかなか予約がとれないと以前同期の親友が嘆いていた。


そんな高級ホテルに酔った勢いで泊まって、しかも逃げ出すなんて……。


咄嗟に部屋に置いてきた金額を思い出す。

けれど今さら気にしても、もうどうしようもないし、引き返すのは避けたい。


タクシーの後部座席シートに深く頭を沈み込め、溜め息をついた。

冷静になってふと見た腕時計は昨夜のまま腕にあり、午前六時少し前を示していた。
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