俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
その日以来、自分の中でなんとなくだけど『失恋』という心の箱に課長がストンと入った気がした。

もちろん完全にふっ切れてはおらず、胸が痛い日は多々ある。


今、課長に平常心で会う自信はない。

それでも少しずつ無意識に自分の中で、この恋を思い出にしようとしているのだとわかる。


あんなに長い時間片想いをしていたのに、その比にはならない速さで納得しかけている理由はよくわからない。


頼子さんとはあの後、数回ヨガ教室で会い、改めて謝罪をした。

そしてお詫びとお礼の気持ちをしたためた手紙を、愁さんに渡していただくようお願いした。

もちろん宿泊代金や迷惑をかけたお詫びになにか贈ろうとしたのだけれど、頼子さんに完全拒否されてしまった。


『もとはと言えば愁が紳士的ではない行為をしたのだから。目覚めたら見知らぬ男が隣にいて怖かったでしょう? こちらがお詫びしたいくらいよ。まったくあの愚弟ときたら!』

頼子さんの愁さんへの怒りは、なぜか収まる気配を見せなかった。

『いえ、あの、もしご迷惑でなければ直接謝罪をさせてください』

……再び会うには相当の覚悟が必要になるけど、自業自得だ。

『いいのよ、本当に気にしないでちょうだい。……むしろ愁に沙和ちゃんを会わせるほうが危険な気がするわ……』

その時、講師からレッスン開始の声がかかり、頼子さんが最後に呟いた声は私には届かなかった。
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