俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
いつもの昼休み、すずと蕎麦屋さんに向かう。

カチンと冷房で冷えたビルから一歩出ると、刺すような陽射しが襲ってくる。

今日もうんざりするくらい暑く、よい天気だ。


この店は本社から徒歩五分ほどの場所にあり、手ごろな価格で美味しい蕎麦が食べられると評判だ。

五つほどのテーブル席にカウンター、といった小さな店内はお昼時のため、混雑している。

順番を待ち、テーブル席について注文をし終えた途端、すずが呆れたように言う。


「直接謝罪する必要はないって言われたでしょ? なんでそんなに気にしているのよ」

「……よくわからないんだけど、気になるの」

溜め息混じりに呟くと親友が可愛らしく小首を傾げる。

「なにが?」

「ホテルから逃げてしまったし、申し訳ないというか……後味が悪いというか……お金も結局返金されちゃったし」

先日頼子さんに弟から預かったと言われ、ホテルに置いてきたお金を全額返されてしまったのだ。

断ったが、受け取っておいて、と押し切られてしまった。

「もしや、その眠っているイケメンに恋でもした?」

ふわふわのパーマがかかった焦げ茶色の髪を揺らし、からかうような口調の親友に全力で否定する。

「まさか!」


恋? そんなのありえない。
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