俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「そう? 沙和が異性を気にするなんて、私と出会ってから課長以外で初めてじゃない? その課長の話も最近じゃめっきりしないし」

「だって、ご結婚されたし……」

運ばれてきた蕎麦を見つめながら、言葉を濁す。

ここは会社に近い飲食店、誰が聞き耳を立てているかわからない。

「それはそうだけど、まるで完全にふっ切れたみたいな言い方じゃない? 正直もう少し引きずるかなって心配してたんだけど……」

「えっ……」

言われてみるとそうなのかもしれない。

ただふっ切れているのかどうかの確信はまだ持ない。

「一回会っただけ、しかも話した記憶もはっきり持ない男性がそれだけ気になるなんてよっぽどじゃない? まさか運命の人とか?」

その少しからかうような言い方に咄嗟に反応できなかった。

可愛い小鹿のような目は真剣で、茶化しているようには見えなかった。


……運命の人?


言われた言葉を心の中で復唱する。


すずはよく『恋人との出会いは運命だ』と言う。

それほどまでに大事に愛しく想える異性に出会えるなんて羨ましいと思う。


恋愛下手の私にどうしたら運命の出会いがわかるのか、教えてほしい。

この人が運命の人ですと誰か言ってくれたらいいのに。


「言っておくけどお伽話じゃないんだから、待ってるだけじゃ王子様は手に入らないわよ」

可愛い顔でバッサリ辛辣な言葉を口にする。

「そもそも王子様に出会った経験はないし、運命の出会いなんてわかりません」

「あら、その弟さんが王子様かもしれないでしょ」

当たり前のように言われて拍子抜けする。

どんな時も物事を明るくとらえる親友は頼もしい。
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