俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「浦部さん?」


甘めの低い声が鼓膜を震わせる。

思わず挨拶も忘れて魅入ってしまい、慌てて声を出す。


「お、お待たせしてしまって申し訳ございません。いつもお世話になっております」

できるだけ平静を装って、取り繕うように挨拶をする。


いつもなら来客にはもっとスムーズに対応できるし、こんなに緊張したりしない。

なのに、どうして感情のコントロールが上手くいかないのだろう。

なぜ、この人の前ではこんなにも失態続きになってしまうのか。

悔しさと緊張が入り交じり、歯噛みしたい気分になる。


「いや、突然呼び出して悪かった」

颯爽と立ち上がって近づいてくる姿に、無意識に腰が引けてしまう。

後退しようとした私の左手首に大きな手が触れて、当たり前のようにグイッと自身の身体に引き寄せる。


「……会いたかった」

小さく吐息混じりに耳元で囁かれ、背中に痺れが走る。


今のは聞き間違い?


手首に強い力は込められていないのに、火傷をしたみたいに熱く疼くのはどうしてなんだろう。


傍目には握手をしているように見えるかもしれない。

でもふたりの距離は不自然なくらいに近い。
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