さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「茂樹、意識ある?返事できる?」
わたしは茂樹に向かってそう呼びかけたあと、振り返って翔くんに尋ねる。
「翔くん、もう救急車呼んだ?」
「あ……いえ……」
「えっ、まだ呼んでないのっ?」
すると、そのとき——
「……うっ……ううっ……」
呻き声がしたので振り向くと、茂樹の目がうっすらと開いた。
「茂樹っ!大丈夫⁉︎」
わたしは彼の顔を覗き込んだ。
「……あ…りさ……?」
弱々しく掠れた声が返ってきた。
——よかった……!
意識はあるし、わたしのことも判るみたいだ。
全身から一気に力が抜けていきそうなほど、ホッとした。
「茂樹さん、お水飲んでください」
翔くんがデュラレックスを差し出す。
そのグラスを目で捉えた茂樹が、頭を上げて上体を起こそうとする。
あわてて、わたしと翔くんが両側から彼を支えた。
そして、グラスを握らせて、ゆっくりと水を飲ませる。
そのとき、わたしはあることに気づいた。