さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜

「ばっ、バカなこと言わないでよっ!」

わたしは思わず腰掛けていたソファから立ち上がった。

「あの夜、菅野先生とは茂樹と出会(でくわ)した直後に別れて、わたしはとっととマンションへ帰ったわよっ!」


「……本当か?」

茂樹が疑わしげにわたしを見上げる。

「土曜日は本当に帰りましたっ!」

——あんたは、ここで呑んだくれてたんだろうけどねっ!

「じゃあ、日曜日は?」

間髪入れずに「尋問」される。
こういうところはさすが弁護士だ。

「日曜日は休日出勤(きゅうしゅつ)して、夜は母親のマンションへ行って泊まったのよっ!」


「めずらしいな、おまえが母親の家に泊まるなんて——本当か?」

「疑り深いわねっ、本当に決まってるでしょ?
なんだったら、うちのおかあさんに訊く?
おかあさんの彼氏の幸生さんに訊いてもいいわよ⁉︎」

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