さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「……わかったよ」
茂樹は、一応納得はした、という顔になった。
——いやいやいや、なんでわたしが必死で言い訳しなきゃなんないわけっ⁉︎
「そもそも土曜日に出会したとき、あんたさっさと立ち去ったじゃんよっ!」
——今さら、なに言ってんのよっ!
「確かあのとき、『菅野先生だったら、申し分ないんじゃないか?』って言ったよね?
それから、『生まれ育った環境も似ているし、人生を共にするパートナーとしてお互い最適だと思いますよ』とも言ったよね?」
「……よく覚えてやがるな」
——あんたと同じ弁護士だからね。
「司法修習の頃から……菅野先生がおまえのことを狙っていたのは気づいてた」
——ええぇっ、そうだったのっ⁉︎
「おれたちの司法修習が終わったあと、おまえを追いかけるように菅野先生が進藤綜合法律事務所に移ったときは……
あぁ、本気でおまえを捉えようとしてるんだな、って思った」
そうぽつりと呟くと、茂樹はがくりと項垂れた。
「そんなとき、おまえの親父さんから事務所に来ないかとスカウトされた。
すでに既定路線でTOMITAに入社が決まっていたから断ったが……」
義理堅い茂樹にとって、富多家への「御礼奉公」の方を断る選択肢なんて、たとえ夢の中でも選ばないだろう。
「それに……学生時代おまえを一方的に振ったおれに……今さらなにができる?」