さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「——し、茂樹……っ!」
わたしは彼のワイシャツにしがみついて、泣きじゃくった。
「ゔっ……ゔえっ……ふえっ……」
茂樹はダークグレーのスリーピースの上着とベストを脱いでネクタイも外してソファに酔い潰れていたから、ワイシャツ姿だった。
スタンダードなレギュラーカラーだけれども滑らかな肌触りのそれは、いつも華丸百貨店でオーダーして仕立てているものだ。
わたしの涙と洟水だけでなくメイクも相まって、その真っ白なワイシャツはものすごいことになってしまっているが——
同じく華丸百貨店でオーダーしているスリーピースのジャケットの方ではなくて不幸中の幸いだった、と思ってもらいたい。