他校生
高校生になると、回りが一気に変わった。


恋愛の重点の置かれ方!

あっという間に新たな人間関係が出来たと思ったら


誰が好きとか誰と誰が付き合ってるらしい……とか。



これはきっとN高でもそうだろう。


焦るのは気持ちばかり。

残るのはN高に行かなかった後悔ばかり。


恋が絡んだ女子のいざこざ。

全く興味のない男絡みだなんて、勘弁して欲しい。



今日も朱里の家でだらだらして


「羨ましいー!」
って言って帰って来た。




こんなことしている場合じゃないのも

こんなことしている間にふっちーに可愛い彼女が出来るかもしれないことも


分かってる、分かってる、分かってる!



それで必死に思い付いたのが……

朱里と制服を交換して忍び込むこと。



そこには何も生まれない。

ただ、中学の時みたいに、当たり前にふっちーを見たかった。



それだけ。



中学の時(あのころ)とは違うって思い知っただけ。


私の知らない人と話すふっちー。
違う制服、違うユニフォーム。



私だけ、進めていない。


朱里とふっちーが
私の分からない話をして

私の分からない人の話をして




“朱里”なんて、呼んでる。


“今西”って呼んでた。中学の時は。



同じ高校に行ってたら、私も……

もっと話せてたのかな。
もっと仲良くなれてたのかな。


もっと……自然に話せるようになってたのかな。



八つ当たりだって分かってる。


朱里が悪いんじゃない。

頭で分かってても、心がいつまでたっても靄が晴れない。




さっちゃんも、むっちゃんも


何てカッコいいんだろう。


それから………朱里も。



私は……
私も……

私なりに……



この1ヶ月でそう思えた。


このままでは“嫌”だから。




朱里の言った通り、ふっちーが私と工藤を誤解してるとしたら?


ふっちーは興味がないかもしれない。
好きな人がいるのだから。


だけど、私は私で……

ふっちーと向き合いたい。


ケンカ友達は中学で卒業した。


今は中学の同級生ってだけ。



そんなのは、嫌だ!




『話したい、事がある』

ふっちーからそうメッセージが届いた。

その場でメッセージを送った。



……朱里に。


『頑張れ!』



そう返ってきた朱里のメッセージに



『頑張る!』

そう返信し


ふっちーには、その夜に漸く




『私も』

って返した。



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