この男、危険人物につき取扱注意!

そして、その時計の針がもうすぐ16時を指そうとしているのに気がついた。

「えっ!もうこんな時間なの…」

千夏は辺りを見渡し、券売機のある場所を探した。

「…あった!急がなきゃ!」

千夏は券売機へと急ぎ、高原から借りたお金で切符を買うと、急ぎ改札口を抜け風の如く階段を駆け下り、ちょうどホームに止まっていた電車へと飛び乗った。

(ふー…急げば大丈夫だよね。夕飯の支度時間迄にはきっと…
買うものは大体決まってるし、いつもの店なら短時間で済む。
下着は…一緒に買えば良いや)

千夏が向かってる先は、会社の最寄り駅にある世界展開するサニクロだった。
シンプルで低価格である事から、千夏の仕事着はここのものがほとんどだった。

『『いらっしゃいませ』』

店内へ入ると客を迎える声があちこちから聞こえて来る。

(ここはいつ来てもお客多いな…
まぁスタッフの対応が良いからね。
あっ居た!)

「鴨居さん、こんにちわ!
今日も手伝って貰って良いですか?
時間なくて…」

「いらっしゃいませ!
また、家に帰ってないんですか?」

この店の店長である鴨居とは何かと気が合い、千夏が来店するとカゴを持ち千夏について回ってくれるのだ。
千夏の“時間なくて”は毎度の事の様で、この時も直ぐ様カゴを用意すると千夏の後についてくれた。

「今日は休みなんですけど、ちょっと急いでて…
コレとコレ…あ、コレもいいじゃん!」

「それ良いですよね?」

「あ、コレのS有りますか?」

「多分有ると…」

鴨居は直ぐにインカムで在庫確認すると、レジで取り置く様にと告げた。
その間も千夏は、鴨居の持つカゴへと商品を放り込んでいた。

(安くて、機能的なのが良いよね)

「千夏さん有りました」

「有難う!
後、インナーを…」

「インナーってキャミとかですか?」

「うん。全般」と言うと千夏は小走りにインナーコーナーへと向かった。

「珍しいですね?
インナーまでとは…
急な出張ですか?」

「…うん…まぁそんなとこ」

商品を鴨居の持つカゴへと放り込むと、“以上!”と言うとレジへと小走りで向かう。
そして、その後ろを商品の入ったカゴを持った鴨居がついて行く。

(ちょっと多すぎたかな…
でも、いつ帰れるか分かんないしね…)




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