この男、危険人物につき取扱注意!
認証を済ませドアを開けると、菅原は既に仕事を始めており、千夏の姿を見た菅原は“やっと来た”と言わんばかりに、ブルーライトを94%カット出来ると言われるメガネを右手指先で上げ視線を逸らした。
部署内は鳴り響く電話に誰もが追われ、騒然としてる中、千夏は自分のデスクへと急ぎ向かった。
何も知らない者達は千夏の登場に、手と口は動かしながらも驚きは隠せない様で、皆の目は見開いていた。
隣で忙しなくカタカタ聞こえていたタイピングの音が止まり、視線を感じた千夏は手を止める事なく「ごめんね?」と嶋田に応えた。
すると嶋田は再びタイピングを始め、今度は手を休める事なく千夏へ話しかけた。
「大丈夫なんですか?」
「うん!問題ない。
嶋田君こそ大丈夫?
昨日は丸一日働いて…
今日、本当は休みだったでしょ?
ちゃんと休みは取らないと身体壊すよ?」
「あなたに言われたくないです!」
「ですね」
「何時まで仕事するつもりですか?」
「んー…一度シフト確認して調節してみないと、なんとも言えないかな」
「あの人…チーフは何してるんですか?」
「チーフはちょっと野暮用で、今日は出勤出来ないのよ」
「野暮用ね…?」
それから1時間ほどして、皆んなが休憩を取る中、千夏はシフトの見直しをしていた。
すると、同僚達から千夏の身体を心配する声が寄せられた。
「出社して大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫」
千夏がそう答えると、離れた場所から「大丈夫よね?」と聞こえて来た。
(ん…菅原さんか)
「だって、買い物してたくらいだもの!」
(あー根に持ってるなシフトの件)
「駅前のサニクロで大量に買い物してたものね?」
菅原の言葉に、千夏はデスクの下に放り込んだ買い物袋に視線を落とした。
「…お陰様でお昼まで寝たら良くなりました」
先程の千夏の対応が余程気に入らなかった様で、クドクドと嫌味たらしく話を続けた。
「それにしても、あなたいつもあんな買い物の仕方してるの?」
「え?」
「店長さんにカゴを持たせ、従えて?」
(え…ずっと見られてたの?)
「一体あなた何様なの⁉︎」