この男、危険人物につき取扱注意!
坂下に対する思いを春樹に伝え、何も伝えず買い物に出掛け心配させた事を千夏は謝罪した。
「…うさぎ?
お前の話が俺には理解出来ないんだが…
すまないが、もう少し分かりやすく話してくれるか?」
「だから、チーフと坂下の恋は応援したいけど、自由に行動出来ないのは嫌だ!って言ってるんです!」
「…ん?すまん。
もう一度…俺と坂下がなんだって?」
「もぅ…頭の良いチーフが私の話を一度で理解出来ないとは…ハァ…(この人ボケたの?)
だ、か、ら、チーフと坂下さんの…」
「やめろ!…もうそれ以上言うな!」
春樹はなんとも言えない顔をして頭を抱えた。
「理解できました?」
「だ…誰から聞いた?」
「坂下さんとの事は絶対誰にも言いませんから、心配しないで良いですよ?」
「…もう坂下の名前を出すな…
その話、誰から聞いたかと聞いてるんだ!」
「え?誰から?」
「拡か?拡から聞いたのか⁉︎
アイツ…なにが口が固いから大丈夫だ⁉︎
2人とも待ってろよ、しっかりケジメつけさせるからな⁉︎」
鬼の様な顔で話す春樹に、千夏は初めて恐怖を覚えた。
(怖っ…ヤクザみたい…
マジで…この人怒らせると…怖いんだ)
「…チ、チーフ?」
「あ゛⁉︎」と、この上ない顔で睨みを効かす春樹に、千夏は身体を縮め震えていた。
そして、千夏は小さな声で「…やっぱり…ヤクザ」と呟き涙を零した。
「…あ、すまん…うさぎ…
お前を怖がらせるつもりじゃ無かったんだ…
ただ拡の口の軽さに…少しばかり…
俺が悪かった。
頼む涙を拭いて俺の話を聞いてくれ」
春樹はハンカチを千夏へ差し出した。
だが、千夏は首を振り自分の手の甲で何度も擦りながら涙を拭った。
「うさぎ…擦ると目が腫れるぞ?
ほら、ハンカチ使え?」
目が腫れては仕事に差し支えると思い、春樹に差し出されたハンカチを千夏は仕方なく受け取り、軽く目をおさえてから、ゆっくり顔を上げた。
そこには、さっきまで鬼の様な顔で怒りを露わにしていた春樹は居らず、なんとも情け無い顔をした春樹がいた。