極上弁護士の耽溺プロポーズ
柊一くんの様子がおかしかったのは、わたしが柊一くんとの関係を全部忘れてしまっていたからだった。

わたしが記憶を失っていると聞いたときの、柊一くんの引きつった顔が甦る。

わたしはバスタブにぶくぶくと沈みながら、先行きに不安を覚えた。

「すまない、うちには水と酒以外何もないんだ。明日何か買ってくるよ」

お風呂から上がると、柊一くんはすぐにミネラルウォーターが入ったグラスを差し出してくれた。

わたしのすさまじい動揺とは裏腹に、柊一くんは普段どおり落ち着いた様子だ。

「……」

「何がいい?」

「……あ、じゃあ、リンゴジュース……」

ちらっと見上げると柊一くんと目が合って、突発的に心臓が跳ねた。

わたしは慌てて目を逸らす。

さすがにあんな話を聞いたあとでは意識してしまう。

「来いよ。髪乾かしてやる」
< 17 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop