極上弁護士の耽溺プロポーズ
再び目を覚ましたときには翌日になっていた。

丸一日眠り続けて混濁した頭で、わたしはお医者さまから自分の身に起きたことを聞かされ、ようやく事態を把握する。

どうやらわたしは車に轢かれそうになったけれど、間一髪、軽い接触で助かったらしい。

どうやら、というのは、事故を起こしたときの状況が全く思い出せないからだ。

頭を打った形跡はないけれど、記憶を辿ろうとすると頭痛が襲った。

「光希、具合はどうだ?」

柊一くんは病室に入るとすぐに南向きの窓を開けてくれた。

カーテンがなびいて、ふわりと心地のよい風が入ってくる。

彼はわたしの気の置けない幼なじみだ。

今回、ひとり暮らしをしているわたしの入院の手続きや着替えの準備など、全部柊一くんのお世話になっていた。

「うん、とっても元気だよ。全然なんともないみたい」

幸い目立った外傷もなく、腕のかすり傷と打ち身だけで救われていた。

念のために行った精密検査の結果に異常がなければ、明日にでも退院できるらしい。

体は正常そのものだった。
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