極上弁護士の耽溺プロポーズ
「光希、こいつは俺の秘書だ」

柊一くんは彼女の言葉を聞き流して、髪を掻き上げながらベッドを出ていく。

「秘書さん……」

「申し遅れました。私、先生の秘書をしております椎葉と申します。こちらの鍵を預かっておりますので、緊急の際はこうして上がらせていただいております」

無遠慮に向けてくる視線とは裏腹に、椎葉さんは極めて丁寧な口調で名刺を差し出した。

「……あ、橘光希です……。すみません、わたし今名刺を持っていなくて……」

どう考えても早朝にベッドルームで自己紹介をしている光景は異様だった。

わたしが困惑している間にも、柊一くんは素早く支度を整えていく。

「椎葉、今日の予定は?」

「十二時まで裁判所で弁論が三件と、午後は二時からクライアントとの打ち合わせが入っております。新規の相談がどっさり十数件ほど」

「はあ? もっとゆとりのある日程組めよ」

「文句があるならスケジュール管理をご自分でなさったらどうですか。ボスは事務所を立ち上げた当時からしっかりご自分でなさっていますよ」

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