極上弁護士の耽溺プロポーズ
昼食を終えると、わたしは時間を見計らってマリコに電話をかけた。

けれどすぐに留守番電話に切り替わってしまう。

そういえばマリコは営業に異動になったらしいか
ら、海外にいるのかもしれない。

自分の仕事の状況も気になったので、今度は同課の先輩に電話をした。

『橘さん? 心配してたよ! 怪我の具合はどう?』

「ご迷惑をおかけしてすみません。おかげさまで大した外傷もないので、できるだけ早いうちに復帰できればと思っています」

『こっちのことは気にしないで、ゆっくり休んでね。こんな機会でもないと有給なんて消化できないんだから。橘さんが担当していた仕事も、仁科さんが引き継いでるよ。橘さんがいなくても十分回るから心配しないでね』

「……」

先輩は気遣って言ってくれているとわかっていても、どうしても気が沈んでしまった。

極端な話、自分なんていなくてもいいと言われたような気がしたのだ。

就職して丸二年必死に勤めた職場は、今自分がこうして休暇を取っている間も、なんの問題もなく動いている。

当たり前だ。

それでも、当たり前のことが悲しかった。

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