極上弁護士の耽溺プロポーズ
わけがわからずぽかんとするわたしに柊一くんは「すまない。手加減したつもりだが、激しすぎたか?」なんて真顔で訊いてくるから、わたしはもうまともに話すことさえできなくなった。

それでも幸せな気分だった。

柊一くんを好きだという想いだけに満たされていた。

柊一くんとのことは何ひとつ思い出せていないのに、わたしの中にはもうそれを否定する気持ちはなくて、胸がただ温かくて心地よかった。

そのままベッドで微睡んでいると、スマートフォンが鳴った。マリコからだった。

『ごめん光希! 昨日電話くれてたよね? 仕事でパリに行ってて、今帰ってきたとこなんだ!』

鼓膜に突き刺さるような声のボリュームに、わたしは苦笑いした。

マリコは電話になると声が一段と大きい。

それでも明るい声に顔が綻んだ。

「そうなんだ、お疲れさま。パリはどうだった?」
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