続・最後のキスが忘れられなくて
帰国
幼なじみから晴れて恋人同士になれたけれど

その約半年後に単独でカナダへ旅立ったことで

元恋人になってしまった周一との最後のキスが忘れられなくて

私のすべてが「帰国」の2文字に塗り替えられた。

スーツケースは行きより帰りの方がパンパンになるのは知れたことだ。

お土産のメイプルシロップのビン詰め数個は服やタオルに包んである。

出国の手荷物検査でもたもたしたくないからだ。

カナダ旅行に来たのはいいけれど

失業認定のために毎月一回は必ず日本に帰っていたこともあって

周一とはその日に絶対会いたくてわがままを通していた。

例えば昼休みの時間に社外に呼び出したり

接待で深夜帰りでも駅で待ち合わせたり

無理やり有給休暇を取ってもらったり

とにかく私からのハチャメチャなリクエストに振り回されて

周一には愛想つかれたかもしれないと悩んだ。

それを打ち明けたら想定外の返答をされた。

「良菜。そんなことくらいで悩むな。」

「そんなことくらいって言えるレベルなの?」

「悩みのうちに入らないな。」

「そうなの?」

「この状況で悩みって言ったら。」

「言ったら?」

「良菜が乗った飛行機が落ちたとか。」

「ちょっと、それひどくない?」

「向こうで殺されたとか。」

「勝手に殺さないでくれる?」

「そういったレベルが悩みだろうが。」

「あのね。」

「ま、そのすべては俺の悩みになるけど。」

いろいろなことを話すことでその後は

見つめ合ってキスが止まらなくなる時間を過ごすことに専念できた。

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