白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)
「小1の時
捨てられた俺を引き取ってくれた時
言いましたよね?
『良い子にしていれば
母さんが迎えに来てくれる』って。
俺……
ずっと信じてたんです。
その言葉」
父さんも母さんも
驚いたように目を見開いた。
「俺、あなたたちに迷惑かけないように
必死だったんですよ。
父さんと母さんに
言われた通りにしていたし。
家でも学校でも
ずっと笑っていなきゃ、
優等生でいなきゃって。
家族で仲良くしている友達が羨ましくても
一人で必死に我慢して。
友達から
『本当のお母さんに捨てられた子』って
目で見られても
平気なふりをして。
あなたたちの言葉を信じて
良い子でいようとしたけど。
どんなに我慢しても、良い子でいても
迎えになんか来てくれなくて。
だから小学校を卒業するときに
良い子でい続けるのをやめたんです。
小1の時にあなたたちが俺に言った言葉は
俺を良い子でいさせるための
嘘だって気づいたから」
「そんなことは……」
母さんが、その場で泣き崩れた。
俺がどんなに酷い態度をとっても
いつも笑顔を絶やさない母さん。
初めて見る母さんの涙に
チクリと心が痛んだ。
でも……
「父さんも母さんも
俺なんか引き取りたくなかったですよね?
他人の俺のせいで
父さんたちの人生を台無しにしたことは
本気で申し訳ないと思っています。
中学を卒業して、働きに出たら
ここを出て行こうと思っていますから。
もう少しだけ、我慢してください。」
俺はそう言い残すと
財布だけ持って
自分の部屋を飛び出した。