白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)

 俺が中学に行かなくなって
 3日目。


 育ての親にも会いたくなくて
 自分の部屋に閉じこもっていた時


「十環くん

 ちょっといいかな?」


 俺の返事も聞かず
 父さんが部屋に入ってきた。


 後ろには、母さんも一緒。



「いきなり、何ですか?」


 俺が鋭い瞳で
 吐き捨てるように言った言葉を無視して
 2人とも穏やかに微笑んでいる。



「今日、写真館をお休みにしたんだ。

 一緒に温泉でも行かないか?」


「十環くん
 サーモンのお刺身好きでしょ?

 お昼は魚市場で、海鮮丼でもどう?」


 相変わらず
 ニコニコと微笑む二人。


「結構です。

 俺のことは気にせず
 二人で行ってきてください」



 俺の言葉に
 悲しさを含んだ瞳を
 一瞬見せた父さん。


 でも、それをごまかすように
 得意の作り笑いで俺を見た。


「僕はね
 十環くんが心を開いてくれるような
 そんな父親になりたいって
 思っているんだよ。

 思っていることがあったら
 なんでも言って欲しいんだ」



 俺が心を開くような
 父親になりたい?


 本気で思っているとは思えない。


 俺は一生
 この人たちを信用しないって決めている。


 今俺の目の前で
『君のことが心配なんだ』とでも
 言いたそうな目で
 俺を見つめる、育ての父と母を。



「あんなひどい嘘

 俺についたくせに?」


「え?」
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