しあわせ食堂の異世界ご飯6
「エマさんとカミルには申し訳ないことをしちゃった……。ううん、お客さんだって、しあわせ食堂の料理を楽しみにきてくれたのに」
 ああもう、嫌になる。
「でも、一番嫌なのはなにもできなかった私自身……」
 昨夜の、『ロスタン公爵の令嬢がリベルト陛下の婚約者になった』というにわかには信じられないできごと。
 この噂は、一瞬でジェーロを駆け巡った。翌日の朝、いや、早ければその日の夜のうちに号外が街へ配られたほどだ。
 今までずっと決まった女性がいなかった若き皇帝の未来を、街の誰もがこれで安心だと喜んだ。
 アリアはといえば、夜会で一緒に入場してきたリベルトとリズを見て、体が固まってしまって動けなかった。
 けれど、それでは王女として失格だ。
 いつ何時でも、常に微笑むことを忘れてはいけない。その笑顔が一番の武器になるのだから――と。
 王女としてそう教育されながら、育ってきた。


 思い返すのは、昨日の夜に開催された夜会のこと――

「あら、もう少し動揺していると思っていましたわ」
「セレスティーナ様……」
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