しあわせ食堂の異世界ご飯6
「もし私がしあわせ食堂で料理人なんてしてないで、初めから王女としてリベルト陛下の隣にいたのならば――」
 そう言いかけて、アリアは口を閉じる。
 今の状況も知ることができていただろう。けれど、その場合はきっとリベルトと両想いになっていることなんてなかったはずだ。
 リベルトが求めてくれたのは、一緒にいて心から楽しめる料理人のアリアだった。
 もし愛のない政略結婚でいいのであれば、大国の姫か自国の貴族令嬢を妻にすればいいだけだ。
「私にできる……いえ、私にしかできないこと……」
 自分もリベルトの妃になるためにできることをしよう――。

 ***

「申し訳ございません、アリア様。リベルト陛下は現在お忙しくて、人と会う余裕がないのです……」
 王城に行くと、それはそれは申し訳なさそうな顔でフォンクナー大臣が謝罪の言葉を口にした。
 彼はアリアがジェーロにきてから今まで、世話などをしてくれていた大臣だ。しあわせ食堂で働くことの許可ももらっている。
 立場的には中立、もしくはリベルト寄りと言っていいだろう。
「……そう、ですよね。昨日、婚約発表もされたことですし」
< 21 / 160 >

この作品をシェア

pagetop