しあわせ食堂の異世界ご飯６
　そんな彼女だけれど、実はエストレーラ王国の第二王女という身分がある。
　ジェーロの皇帝の花嫁候補として、この地までやってきた。このことを知っているのは、侍女と王城の関係者だけ。

　そしてもうひとつ、誰にも言ったことのない秘密がある。
　それはアリアに前世の記憶があるということ。日本人として過ごし、実家の定食屋の手伝いをしていたごく普通の女の子だった。
　前世からずっと料理が好きで、美味しいと食べてもらうことが最高に幸せ。
　しあわせ食堂で振る舞っているのは日本の料理で、アリアは異世界の人たちも虜にしてしまったのだ。

　いつもは元気いっぱいで、特に料理をしているときは活き活きしていて楽しそうなアリア。
　料理中のため息なんて、大事件ではないだろうか。そのため普段から身近にいる人間は、いったいなにがあったのだろうと考える。
「ちょっとカミル、アリアちゃんはどうしたんだい？」
　エマがぐいっとカミルの耳を掴んで事情を聞くも、カミルだってわからない。肩をすくめて首を振るしかない。

　ちょうど店内から厨房に顔を出していた、しあわせ食堂の店主のエマ。
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表紙・目次

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