しあわせ食堂の異世界ご飯6
「しかし自分がおにぎりを食べられなかったと知ったら、リベルト様は拗ねてしまわれそうだ」
「――!」
 ローレンツの言葉に、今度はアリアが笑う。
 まさかそんなことを言われるとは思っていなかったが、確かにリベルトの好物はアリアの握るおにぎりだ。
 報告したら私が怒られてしまうと言うローレンツを見て、そういえばリベルトにおにぎりを作る約束をしていたことを思い出す。
(……実は、リベルト陛下の分もあるのよね)
 ローレンツにお願いして、リベルトに渡してもらおうか。それとも、今回のことで勝手に進めていることを怒っているのだというアピールを兼ねて、自分で食べてしまおうか。
 ――なんて、一瞬でも考えてしまった自分は王女失格かもしれない。
「リベルト陛下とローレンツさんの分もあるので、渡していただけますか?」
「そうだったんですか? ありがとうございます。きっと喜ぶでしょう」
 別に、アリアはリベルトに意地悪をしたいわけではないのだ。皇帝の彼が最善だと判断したのなら、きっとその判断は正しかったのだ。
(私が王女としてもっとしっかりしていればよかった)
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