しあわせ食堂の異世界ご飯6
 そうすれば、きっとまた違う未来を一緒に作れたはずだ。
 一国の王女という肩書があるのに、自分はなんて力不足なのだろう。
 小国だから頼りないのだろうか。料理ばかり作っているから? そんな考えが脳裏に浮かぶ。
(私が王女としてできることなんて――あ)
 ふいに、ひとつの答えがアリアの中で花開く。
 自分が一番リベルトの力になれる方法を、皇妃として一番の強みはなにかということに、気づいた。気づくことができた。
「アリア様、どうしましたか?」
 表情が変化したアリアを見て、ローレンツが声をかけてきた。きっとなにかを悟ったのだと気づいたのだろう。
 けれど今、それを言うつもりはない。
 わざわざ自分がなにをしようとしているか告げ、リベルトの懸念事項を増やすつもりは毛頭ない。
(それに、私がすることに危険はないもの)
 晴れやかな顔で微笑むことができたアリアは、ゆっくり首を振る。
「いいえ。わたくしは戻りますね。お時間いただきありがとうございました」
「こちらこそありがとうございます」
「豚汁はぜひ、冷めないうちに召し上がってください」
 最後にそう言って、アリアはシャルルと王城を後にした。

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