しあわせ食堂の異世界ご飯6
 アリアがそんなふたりを微笑ましく思っていると、視界に鮮やかな緑色が現れた。
「あ、ブロッコリーがある」
 のんびり市場を歩いていると、アリアがいつも買う店で足を止めた。野菜の種類が豊富で、質もいいため利用している。
「お、いらっしゃい」
「こんにちは、おじさん」
 アリアは挨拶をして、並ぶ野菜を手に取り具材を考える。
(芋系がなにかほしいような……それともほかの……)
 サツマイモも美味しいし、きのこがたっぷりなのも歯ごたえがあっていいだろう。けれどお肉も入れる予定だから、それよりももう少し――
「あ、これいいかも!」
 目に留まったかぼちゃを手に取ってアリアは満足げに微笑む。
 ずっしりとした重さに、左右対称の丸み。ヘタの部分がちゃんと乾燥しているので完熟していることもわかる。
 これならほくほくになって甘みもあるし、冬の料理にはぴったりだ。
「おお、美味そうなかぼちゃだな。いったいどんな料理にするつもりなんだ?」
「グラタンっていう、熱々の料理なんだけど……」
「初めて聞く名前だな」
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