三月のバスで待ってる



「おはようございまーす!」

校門をくぐると、先生や生徒会らしい人たちの元気な声があちこちから飛んでくる。私は挨拶を返す余裕もなく、声の下をくぐるように彼らの前を通り過ぎた。

さっき一瞬だけ薄らいだ緊張は、学校に着く頃にはすっかり元通りだった。校庭を足早に通り過ぎ、下駄箱で靴を履き替え、職員室に向かう。

担任の加納先生は、40代後半の、理科の先生だ。

「おー櫻井、おはようさん」

と眠そうな目で言う。最初に会った時も思ったけれど、なんだかやる気のなさそうな先生だ。

少し説明を聞いて、加納先生が気だるげに「そろそろ行くかー」と立ち上がった。

……ついに、この時が来てしまった。

どんなに先延ばしにしたくても、時間を止めることはできない。

行きたくない、行きたくない、と心の叫びも届かず、着実に教室との距離が近づいていく。

「じゃ、呼んだら入ってきて」

加納先生が言って、先に入っていく。

ドクン、ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。足がすくむ。もういっそここで倒れてしまいたい。





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