三月のバスで待ってる
13.『三月のバス』


ーー1年後、3月。

「いま思えば、この学校で過ごした3年間は、あっという間でした。これから私たちは、それぞれの進路に向かって一歩一歩自分の足で歩いていきます。今後、大きな壁にぶつかったとしても、この学校で得た多くの思い出や、学んだことを糧とし、力強く生きてゆきます。在校生のみなさん、先生方、本当にありがとうございました」

卒業式が終わって、後輩や先生たちに見送られながら校庭に出た。
ふと顔をあげて、校舎を眺める。
みんなにとっては3年間ーー私にとってこの学校で過ごしたのは1年半だった。
ここに来る前は、不安で押し潰されそうだった。どこに行っても馴染める気がしなかった。受け入れられる気がしなかった。

でも、私は変わった。

緊張が少しずつ溶けていって、友達もできて、好きなことがひとつずつ増えていった。部活には入らなかったけれど、絵を描くことの楽しさを知った。芸術祭。体育祭。合唱コンクール。夏の合宿。もちろん楽しいことばかりじゃなかった。過去を乗り越えても完全に忘れることはできなかった。進路を決めるのにもずいぶん悩んだ。苦しい時期も、投げ出したくなることも、たくさんあったけれど……

つまづいて挫けそうになるたび、彼がくれた笑顔が、たくさんの言葉が、私を救ってくれたのだ。
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