三月のバスで待ってる

もう二度とあの美しい景色を見られないんだと思っていた。
でも、見れた。その気になれば、少し足を伸ばせば、いつだって来ることができた。
こんなにもきれいな景色を、大好きな人にも見せたかった。
一緒に見上げたかった。
いや、過去形じゃない。
一緒に見たい。
何度突き返されても、私は、彼と一緒にいたい。

ーー想太さん。

私は目の前の美しい景色を眺めながら、胸の中で呼びかける。
会えなかった。顔を見ることすらできなかった。
それでも、願うことはできる。

ーーお願い、目を覚まして。

時間がかかってもいい。
生きてさえいれば、きっと、またどこかで会える。
そう信じているから。

< 146 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop