三月のバスで待ってる

「深月、大丈夫……!?」

気づけば、廊下にうずくまっていた。
「気分悪いの?保健室行く?」
無言で、こくりと頷いた。
「ついていこうか?あっ、教科書とか……」

「……大丈夫、1人で行けるから」

私は立ち上がり、教室に入った。

やっぱり、私には、友達を作る資格なんてなかったんだ。

友達に、本当のことも言えない。知ったらきっと、私と一緒にいたいなんて思わないだろう。今は知らないかもしれないけれど、それだって時間の問題だ。

美術の教科書と筆記用具を机の中に押し込む。さっきまでの楽しかった気持ちが、夢でも見ていたかのように一瞬にして消えてしまった。

ただの噂話。でも人は、根拠のない話を信じて、憶測だけで、勝手に噂を広めていく。

クラスメイトたちの顔が、なんだか急によそよそしく思える。彼らも知っているのだろうか。隣のクラスの女子が知っていたくらいだ。誰が知っているかもわからない。誰の顔も見れない。

私は押しつぶされそうな空気に耐えられず、教室を飛び出した。

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