ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


「・・・よし。わかった。完璧にしてやる。だから、リハビリを死ぬ気でやれ。手術が上手くいってもリハビリが上手く行かなかったら、結果は良くない。」

『えっ?』

「俺は今まで同様の手術を180例近くやってきたけど、最終結果が100%完治しなかったのはたったの2例、いずれもリハビリを途中で止めてしまった症例だけだ。それでも治らなかったのは全て医師の責任にされてしまう。だから、俺をヤブ医者にするもしないもキミのリハビリの成績次第だからな!」


“キミのリハビリの成績次第・・・・”

それがヤブ医者になるかならないかを決めるなんて
お前の成績の悪さのせいでヤブ医者呼ばわりされたなんて言われたら
高校時代まで成績優秀で通っていたこの私の名がすたるじゃない!

それに自分がこの人に負けを認めるみたいで
そんなの悔しいじゃない!


『やってやるわよ!99%治ったなんて言わせない。私にとって99%も0%も同じ。私が得る成績は昔から100%のみ。もし、アナタがヤブ医者でも、私のせいでヤブ医者になったなんて言わせないからッ!』


私は彼をギッと睨みつけていただけでなく、怪我していない右手でグッと拳を作っていた。


「よし、その意気だ!やるぞ!」

『やってやるわよ!』


すっかり戦闘体制に入っていた私は
彼のそんなゲキに拒否することなくついつい力強い返事をしてしまった。

でも、手術を受ける覚悟はできたけれど
祐希はどうなるの?

今、私が手術室へ行ったら
ナオフミさんも緊急で産科に呼ばれちゃってるし

祐希は?
祐希は・・・?
どうしよう・・・・

福本さん、今日、休みかな?
急な話で申し訳ないけれど、祐希のこと、頼んでみようかな・・・


「もしもし、整形外科の森村です。」


ひとり祐希の預け先に頭を抱えていた私の隣で
突然、受話器を手に取った森村医師。
その横顔からは、私と同様に戦闘体制に入っている様子が窺えた。


「お忙しいところスミマセン・・・伊藤先生、今、お時間ありますか?・・・ええ、ええ、お願いできますか?先生のお力添えが必要なんです。・・・あっ、ハイ、そうですか?助かります。お待ちしておりますので・・・・ハイ、宜しくお願いします。」


ハイ?
なによ、それ

折角、人が手術を受けるのに対して前向きになって
しかも祐希の預け先を具体的に検討し始めていたというのに
俺が完璧に治してやるなんてあんなに勢いよく言っておいて

今更、“先生のお力添えが必要なんです”なんて

なによ!
結局、先輩医師に私の手を執刀して貰うように頼んでいるじゃない




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