ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
最低
サイテー
あんな人、サイテーよ!!!!!!
あんなにも大口叩いてたクセに
結局、自分じゃ何もできないんじゃない!
やっぱり、彼に対する“サイテー”という第一印象はそうも簡単には変わらない
やっぱり、最低だよッ!
「失礼します。伊藤です♪」
スタッフ通用口らしきドアが開く音とともに聞こえてきたちょっぴり高音のかわいらしい女性の声。
そちらに目をやるとそこには
白いトレーナーに紺色のジャージ、そして淡いピンクのチェック柄のエプロンを着用し、ポニーテールのヘアスタイルをしたなんとも優しそうな笑顔の女性が立っていた。
「伊藤先生、お忙しいところスミマセン、これから緊急でこの高梨さんの手術を行うので、彼女のお子さんをきょう一日、小児科の病棟で預かって頂きたいんです。」
えっ?
小児科病棟で預かる?
「彼女のお子さん、心臓の手術歴があるので、感染症にかかるとかなり危険です。
お子さんが入院中の他のお子さんから感染症を貰わないように充分に配慮して下さい。」
なんでそんなことまで知っているの?
祐希の心臓病のことまで
『・・・・・』
そして私達のほうへ近づくように手招きをしながら
丁寧な口調でその女性に説明をし始めた森村医師。
さっきまでの人をおちょくるような口ぶりとか淡々とした話し方とかとはかけ離れたその口調。
しかも、伊藤先生って
あんなにかわいいエプロンを着ているなんて
森村医師の整形外科の先輩じゃないよね?
預かって頂きたいって
あの格好からいって・・・保育士さん?!
「やべ、手術室、押さえるの忘れてた。俺、オペ室に電話してますんで、伊藤先生、とりあえず、高梨さんとお話ししていただけますか?」
「ハイ、わかりました♪」
これから緊急で手術しなきゃいけないのに
手術室を押さえる前に
祐希を預かって貰う保育士さんの手配をしてくれるなんて
森村医師って、もしかして
母親という立場の私に気を遣ってくれてるの?
私のコトが気に入らなくて、私に対してはオレ様態度を取っていると思ってたのに
もしかして私に気を遣ってくれてるの?
第一印象、サイテー最悪の白衣男
その人が私の怪我を直してくれる主治医になるなんて
今朝、天気予報を見ながらベーコンエッグを作っている時には
全く予想なんかしていなかった
こんなあり得ない再会が突然やってくることも・・・