ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


それらを拾い上げるためにしゃがんで、拾ってから立ち上がろうとした瞬間。

布団の隙間から出ていた怪我していない右手の指が伸びたままでいるのを見つけた。


『こいつらを握ったまま、眠ってしまって、それが落ちちゃったんだな・・・』


ハーモニカのキーホルダーと婚姻届
どちらも、これからの俺達に必要なもの

それらを握ったまま眠ってしまったらしい伶菜に
俺を必要とされたような気がして


『ばかだな・・・布団から手を出していたら冷えちゃうだろ?』


安堵の溜息をつきながら、少し冷え始めていた彼女の右手をそっと布団の中に戻してやった。


また、傍にいることを少しでも感じて欲しい俺は、来室したこととリハビリ頑張れと伝えるメモを暗がりの中、カーテンの隙間から漏れる月あかりを頼りになんとか書いて、拾い上げたキーホルダーと婚姻届に添えて、それらを床頭台の上に置いた。


『おやすみ。』


そして、暗闇の中での俺の言動に一切気がつく気配のない伶菜の頬にそっとキスをして、祐希の頭も撫でてから病室を後にした。



その後、誰もいない自宅に戻らず、仮眠室でPHSのアラームを2時間後にセットして眠った。

ドクターコールではなく、アラーム音で目が覚めた2時間後。
シャワーを浴びて、クリーニング済のスクラブ(手術着)に着替える。

こういう流れはよくある


けれども自宅ではない場所であるこの病院に
家族である伶菜と祐希がいる


それもあってか自分がすべきことに集中しなくてはいけないのに
集中しきれていない俺


伶菜達をがっかりさせないためにも
せめて自分がすべきことをしっかりやる


それが今、自分ができることなんだと言い聞かせて、白衣に袖を通し医局に移動した。




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