ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
数日前だったか、夜中に伶菜の病室へ行った際に男性看護師に注意を受けた。
だから、彼女の病室のほうへはさすがに近付けない
そのため、病室がある場所の反対側の階段から病棟内に入り、消灯後の薄暗い廊下をナースステーションのほうに向かう。
ナースステーションの手前の部屋のドアの隙間から灯りが漏れている。
手術を受ける患者、受けた患者が入院している外科病棟はナースステーションにリカバリールームと呼ばれる部屋が隣接されている。
その部屋では主に手術後間もない患者の経過を慎重に診るようになっている。
もしかして整形外科であるこの病棟も灯りが漏れている部屋がリカバリールームかもしれないと思い、できるだけ足音を立てないようにとその前を通ろうとした。
その時だった。
「・・・・オレがさ、キミに初めてお目にかかったのは、キミが左手を怪我して救急外来にやってきた時でもなければ、その前に医局付近でぶつかった時でもないんだ・・」
森村医師の声。
誰かに語り掛けているような話しぶり。
その部屋のドアには処置室というプレートが掲げられている。
こんな時間に処置するのか?と思わず立ち止まってPHSの時刻表示を見た。
もうすぐ0時近く。
もしかして患者が急変でもしたかと一瞬思ったけれど
話の内容からそうでもなさそうだ
「全く覚えがないみたいだね、名古屋駅から徒歩5分の居酒屋“やきや亭”って言えば、想い出すかな・・・酔っ払いのレイナさんは・・・」
「・・・やきや、亭・・・?!」
森村医師が口にした、レイナさんという名前。
その直後に聞こえてきた、やや戸惑った声色の伶菜らしきの小さな声。
本当に伶菜本人なのかが気になって、俺はドアに耳が接触しそうな距離まで近付いた。