ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
『麺、伸びちゃうから、そろそろ食わないとな。』
湯気で皺が寄り始めたカップ麺の蓋をそっと開けて、ずずずと食べ始めた。
既に麺が伸び始めていたが、体は温まる。
それでも、やっぱりクリームシチューには敵わない。
『コロッケも食べたいなぁ。』
寂しいという感情
それは8才の時、高梨家を出て東京へ行く時に胸の奥深くにしまいこんだはずなのに
再び手にした家族という存在に
その感情を引き摺り出された
今の俺は
伶菜のためだと思ってやっている俺のやり方は
自分の寂しいという感情に突き動かされているだけなのではないか?
本当にそれでいいのか?
『俺がやろうとしていることは、俺の我儘にすぎないんじゃ・・・』
ついさっきまで手のリハビリのレクチャーを受けた直後には
俺のやり方でいいんだ・・そう思った
でも、カップ麺1つで寂しさを自覚したことで
我儘かもしれない・・そうも思ってしまった
何が正しいのか
何が間違っているのか
正直わからなくなった
それは、今、自分のやり方というものは
伶菜の想いが反映されていないから
伶菜はどうしたいのかを
ちゃんと聴いてやれていないから
でも、今の伶菜と俺の関係はいいとは言えない
だから、ちゃんと聴いてやれる保証なんてどこにもない
じゃあ、今、俺は何をすべきか?
『リハビリのやり方だけじゃなくて、1日を通じて伶菜がどのようにリハビリをしているかを知ることも必要だな。』
自宅で俺と一緒にリハビリを進めるという自分のやり方が伶菜にとって良い方向に向かうのかをしっかりと検討することだろう
本当に自宅でリハビリができ、治療もきちんと進んでいくのかを・・・
やっぱり自分のしていることは悪あがきなんだろうなと思いながら、
俺は伶菜の自主トレーニングメニューを確認するために、整形外科病棟ナースステーションに向かった。